スポーツ障害と外傷

阿曽沼整形外科医院 阿曽沼要
かかず整形外科 嘉数研二


スポーツ外傷とスポーツ障害

「スポーツ外傷」は1度の強い外力によっておこるもので、骨折・脱臼・稔挫・腱や靭帯の断裂・肉ばなれなどがあります。これは交通事故や労災事故とか、日常生活でよく見られる転倒、転落、打撲、捻りなどによるものと全く同じです。ここで取り上げる「スポーツ障害」は、過使用症侯群とか使いすぎ症侯群とも言われており、小外力のくり返しでおこるものです。針金は一度や二度曲げても折れませんが、何回も何回も曲げ伸ばしをくり返すとやがて金属疲労をおこして折れてしまいます。「スポーツ障害」は、この金属疲労のように、骨や軟骨、筋肉や腱を使いすぎることによっておこる慢性疲労の状態なのです。

主なものは、野球肩、水泳肩、野球肘、庭球肘、脊椎分離症、筋筋膜性腰痛、疲労骨折、平泳ぎ膝、膝蓋骨軟化症、オスグッド・シユラッテル病、アキレス腱炎、足底筋膜炎などです。ひどい場合は神経麻揮や筋萎縮をきたしたり、関節の骨や軟骨が破壊されて関節の中にはがれ落ちる場合もあります。

スポーツ障害発生の原因

1.過度使用 0verUse
休養日も設けないで、練習や試合をしすぎると障害をおこします。野球肩や野球肘は、投球回数の多さと明らかに関係があります。

2.小外傷の反復
肘や膝の軟骨に小さな傷がついて、それがくり返されると早く障害をおこします。

3.間違ったトレーニング方法
非科学的なトレーニング方法はスポーツ障害発生の一大原因となります。 →次頁参頗。

4.解剖学的特性
肩や膝などには障害をおこしやすい弱点があり、こすれ合ったり、ぶつかり合ったり、締めつけられたりしてなります。

5.スポーツを行う場所の影響
競技場や道路の路面、体育館の床もスポーツ障害発生に関与してきます。

6.用具の影響
スポーツシューズ、グローブ、ラケットなどが不適当な場合も原因となります。

7.その他

栄養のアンバランス、変則的なフォーム、患部をかばってもなります。

スポーツ障害をおこさないために

障害予防は体づくりから夏の暑い時期だけでなく、春先の涼しい時期でも、汗をかいて水分が失われ、体重が減少しまず。そうすると運動能力が低下して、トレーニング効果が悪くなってきます。水分が失われた状態でトレーニングをすると、外傷や障害をおこしやすくなります。それを防ぐために、涼しくとも水分を補給しながらスポーツをして下さい。疲れてスタミナがなくなってきても、外傷や障害をおこしやすくなります。したがってスタミナ源のグリコーゲンを体に大量にたくわえておくことが必要です。それには間食を控えて、朝食には炭水化物(ご飯・パン・めん類・いも類)と果物(とくに柑橘類など)を食べることです。外傷や障害に強い体をつくるには、偏食をせず何でも食べることです。
バランスのとれた栄養をとるには、せん維の多い野菜を含めて、1日に30種類以上食べて下さい。成長ホルモンは睡眠中に分泌されます。体づくりのためには、成長ホルモソの分泌リズムに合わせ、たん白質源の魚・肉・豆類・カルシウム源の牛乳や乳製品・小魚・海草などを、夕食に多く食べるとよいでしょう。骨の材料になるカルシウム源の牛乳を多く飲んでいた者ほどスポーツ障害が少なかったという報告があります。スポーツマンは汗で大量のカルシウムが失われるので、1日に1リットル以上の牛乳が必要なそうです。

準備運動・整理運動・休養

私達の調査では、準備運動や整理運動を軽視する傾向がみられました。とくに整理運動をしているのは全体の3割もいませんでした。スポーツを始める前の準備運動は血液循環をよくし、筋肉の柔軟佐を増して行動力を高め、スポーツ外傷の予防に役立ちます。一方、終わってからの整理運動は呼吸を整え、疲労物質の乳酸を除去し、翌日に疲れが残らないようにするので、スポーツ障害を予防するためには絶対必要なことです。整理運動もせず、休養日もとらずにトレーニングを毎日続けると、疲れがたまってスポーツ障害をおこしやすくなります。トレーニング効果の上がる練習時間は、せいぜい2~3時間だそうです。だらだらと時間をかけるだけのトレーニングは集中力がなくなり(心的飽和状態)、ケガをしやすくなり、技術も身につきません。
短時間に科学的なトレーニングを集中的にし、休養をとって疲れをためないでトレーニングをするのが上達への近道なのです。

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