医療法人かかず整形外科 麻酔科・リハビリ科・リウマチ科

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成長期の「けが」と「障害」について

主として、小学生から高校生までの成長期によく見られる「けが」と障害について、日常の診療の中で遭遇した例を振り返りながらながらその問題点や注意点を述べます。特に、深刻な後遺症が懸念される疾患については詳細に説明し、日頃の学童や生徒指導に役立たせていただきたいと思います。

手指の創傷 突き指 前腕骨骨折 肘関節部の
外傷
肩関節損傷 足関節捻挫 アキレス腱
損傷
膝関節損傷
下前腸骨棘
剥離骨折
オスグード病 野球肘 大腿骨頭
すべり症
腰椎分離症 腰椎
ヘルニア
側わん症 身体の柔軟性
異常

以上の疾患について注意点を述べます。

「手指のけが」は最も頻度の高いものです。手指や手背部に傷がついた時、小さいからといってそのまま消毒もせず放置し、数日後に疼痛が強くなり赤く腫れて、微熱さえ生じて来院することがあります。直ちに切開排膿、抗生剤を投与し多くは事なきを得ますが、運が悪いと敗血症などにこじれる場合もあります。また刃物やガラスによる切創の場合、腱の損傷に気が付かず、数日してから指が動かないと言って来院することもあります。こうした手の「けが」は、早期の適切な処置が肝心です。

「突き指」はバレーボール、バスケットボール、ソフトボール、野球等の球技に多く見られますが、指の一番先端の骨(末節骨)に付いている伸筋腱が切れたり、あるいは付着している部分の骨が剥離したりして、指が曲がったままになってしまい、いわゆるマレットフィンガー(槌指)となります。これも早期に指スプリントをつけ一定の期間固定をすると手術をせずに治すことが出来ますが、手術をしなければならないことも少なくありません。

「前腕骨骨折」は正確な整復固定と計画的な後療法がなされないと、遷延治癒偽関節や可動域制限などの後遺症を来たし易いため油断が出来ません。

「上腕骨果上骨折」はよく見られる外傷です。多くの場合、垂直挙上牽引法による愛護的な整復を行い、ギプス固定を行いますが、1乃至2週間の入院を必要とし、この間の手指の運動と拘縮予防に注意を要します。場合によっては鋼線で固定するといった手術を行い、早期リハビリに入る場合もあります。

「上腕骨外果骨折」は果部の転位を来しやすく、整復しないと変形治癒を来たし後遺障害を引き起こしますので、小児では数少ない手術の適応となる骨折の一つです。

「肩関節脱臼」は関節包が損傷するのですから、脱臼の整復が成功し痛みが無くなったからといって油断は出来ません。一定期間の固定が必要で、これが不十分ですと習慣性(反復性)になってしまう場合もあります。

「腱板断裂」、腱板は肩関節を挙上する重要な役割をしますが、打撲やバレーなどのアタックで強い負荷がかかると断裂を起こすことがあります。MRIなどの検査で比較的簡単に診断することが可能となりました。手術(縫合)することによって治ります。

「足関節捻挫」は内返しによる捻挫が圧倒的に多く、外側部の靭帯が損傷します。関節の動揺が見られることもあり、これを放置しますと長距離歩行や強い運動時に疼痛発生の原因となります。ギプス固定と早期の荷重歩行が大切で、今は弾性のプラスチックギプスを使用しているため、昔の石膏ギプスのような不自由さはありません。

「アキレス腱断裂」は10才台にはあまり多くありませんが、ギプス固定によって治す保存的療法と手術による方法があります。前者はギプス固定期間が2週間程長引きますが外来通院での治療が可能です。スポーツをやる人は早くリハビリに入れる手術をする場合が多いです。

「膝関節の靭帯損傷」は前、後の十字靭帯損傷と内側、外側の側副靭帯損傷があります。完全断裂の場合は関節動揺が生じて後遺障害の原因となりますので手術適応となる場合が多くなります。部分断裂の場合はギプス固定で治ります。
「半月板損傷」を合併することもあり、損傷程度に依っては保存的治療で治ることもありますが、痛みや関節水腫等の合併症を生じることが少なくありません。従って一定期間はしっかり関節固定等の治療を行って様子を見ることが必要になります。

「下前腸骨棘剥離骨折」も時に見られます。短距離競走でダッシュをしたり、サッカーでシュートをしたりした際に大腿直筋に強い力がかかりこの筋の付着している骨盤の剥離骨折を起こすものです。しかし安静によって自然に治癒し後遺症は残しません。

「オスグード病」は運動をやっている成長期の子供たちに多く見られる膝の前方の痛みです。膝の皿(膝蓋骨)から数センチ下方の隆起部分(脛骨結節)の腫れと痛みを訴えます。たまに、本を読んで骨肉腫じゃないかと心配したお母さんに連れられて来院することもあります。走る、蹴るの動作の繰り返しや圧迫、打撲が誘因となりますが、大事に至る疾患ではなく骨の成長とともに治ってしまうのが大半です。上部の膝蓋靭帯部の圧迫固定装具を着けたり、湿布を含めた投薬を行いますが、どうしても痛みが強いときは局所の注射をすることもあります。

「野球肘」は過度に繰り返す投球動作により発生する障害です。肘関節の内側や外側の痛みや運動障害を訴え、時に軟骨や骨の変性を来たしその「かけら」が関節内に遊離することもあり、早急に手術をしてそれを除去しなくてはならい場合も生じます。これを放置しますと肘関節の機能障害を残し禍根を残します。

「大腿骨頭すべり症」はたまに見られる注意を要する疾患です。小学高学年から中学低学年で、二次成長のやや遅い太った体型の子供が要注意です。この子供達の股関節部の大腿骨頭はまだ成長軟骨が存在し、負荷に弱く、ここに過度の力がかかり骨頭がずれてくるものです。知らずに放置しますと大腿骨頭の変形を来たし股関節症へと進行し終生歩行障害に悩むことになります。私の経験した症例は中学一年生でやはり太った二次成長のやや遅いと思われる子供でしたが、野球部に入り球拾いをさせられる毎日が続き発生したものでした。幸い早期に発見し手術を行いその後全く障害を残しておりません。

「腰椎分離症」は腰椎の峡部という部分が成長過程において癒合せずに離れて完成されてしまう場合や繰り返されるストレスのために分離してしまう場合があると言われますが、腰痛のため来院しレントゲン写真を撮ってはじめて発見されます。多くは日常生活上支障無いのですが、無理な運動や負担をかけると腰痛が生じ易いようです。有名なプロ野球選手やバレーの選手の中にもこの疾患と言われながら活躍している選手がいるようです。あまり神経質になることはないのですが、すぐに腰痛が生じ易く日常生活に支障がある場合や、神経症状がある時は、検査や段階に応じた治療が必要になります。

「腰椎ヘルニア」は成長期に見られる場合特に「若年性腰椎ヘルニア」といわれ、下肢の著名な挙上制限や躯幹の強い運動制限が特徴的です。一定期間の安静と加療が必要なことは言うまでもありません。

「側わん症」「躯幹の硬さ」を有する子供たちも結構多く見られます。こうした子供たちは外見上見過ごされることが多く、部活や体育の時に無理な運動を強いられ、背腰部痛を来したり筋肉や靭帯の損傷を起こして苦しむことが少なくなく、その成長にも悪影響を及ぼしかねません。柔軟体操、腹筋や背筋の訓練はその子供に合った方法で指導されねばなりません。

さて以上のように、成長期のけが、特に骨折については特徴があり、子供の骨は骨膜が厚く強靭で血行性に富み、骨自身も柔軟性に富んでおり、骨の再造形が盛んなため、短期間で癒合ししかも自然矯正力が働くので、特殊な場合を除き保存的療法が原則となります。例外として、前述した転位のある上腕骨外果骨折、大腿骨頚部骨折、骨端部骨折等があります。また骨癒合が完成した後、ギプス除去後の後療法も必要ありません。

これに対して、障害についてはスポーツに関連するものが大部分です。今やスポーツはその種類に関わらず国民的な過熱ぶりを見せ、野球やサッカー、テニス、ゴルフなどプロ選手達の華やかなマスコミ報道がなされる度に、子供達の熱い憧れの眼差しが更に強く注がれるようになっています。親たちまでもそれにひきづられる様相を呈しています。その結果、子供達の身体を考えない無計画な鍛錬を強要し、スポーツ偏重、勝てば良いの勝負主義、スポーツの極端な商業化、そして本来の体育の目標を忘れ、学校体育の空洞化を生じせしめることが懸念されます。ごく特殊な一握りの者のために多くの不幸な状況をつくる愚かさだけは避けたいものと思います。能力のある子供、ない子供を十把ひとからげでやるのではなく、事前に一人一人の子供の身体能力と特徴をメディカルチェックし、子供の年齢や身体条件に合った計画性のある運動指導が要求されます。これは骨格、筋に限らず、心肺機能やその他の内蔵についても同様です。小学校体育の目標は運動の経験を通して

(1)運動に親しませ
(2)身近な生活における健康・安全について理解させ
(3)健康の増進、体力の向上をはかり
(4)楽しく明るい生活を営む態度を育てる

中学校体育の目標は

(1)運動を通じて強健な身体を育て、強い意志を養い、体力を向上する。
(2)運動技能の習得、運動の楽しさを味わい、生活を健全に明るくする 能力と、態度を育てる。
(3)競争や協同の経験を等して公正な態度を育て、規則を守り、共同して責任を果たす態度を育てる。
(4)健康・安全に留意して運動する態度を育てる。

高校体育の目標

運動の合理的な実践を通して高度な運動技能を習得させ、心身ともに健全な人間の育成に視するとともに体育・スポーツの振興・発展に寄与する能力と態度を育てる。となっています。

具体的な年齢に応じたスポーツに必要な能力の発達は、6から10才では、スポーツに対する興味に、運動神経の発達の度合いのめざましい年代で脳神経系の発達の年代。11から14才は、呼吸器循環器系が発達し、耐久力や筋力が増強する。いろいろのスポーツ本来の基本的技術を身につけ、持久力をつけ集団スポーツにより精神面の強化に努めるがトレーニング過度になってはいけない。15から18才は、筋力の増強めざましく骨格も大人に近くなる。専門的トレーニング及び筋力を付けるトレーニングも可能になる。といわれます。こうした基本的な原則を忘れることなく、成長期の子供達の指導を行い、心身ともに健全な育成を行って欲しいと思います。
(文責 嘉数 研二)

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